海外でのドライブ
その①                                小泉正彦
【この車は、デーゼルよ】と、言われてキーを受け取り初めてレンタカーにのった。
それも言葉の解からない海外で、いきなりブルンブルンガガガとエンジン音のする赤い乗用車、父親と二人の初めてレンタカーに乗った。はじめての海外でのドライブ、   

いきなり交通量の多い街中から、郊外へと車を進めた。日本と違い右側通行だが、運転するうちに慣れてきた。ギヤーをローからセコンド、トップ、と入れ替える。だいたい解かったつもりでいた。でも車窓の風景を見て楽しむ、どころではない。しばらくして、郊外へと出るロータリに出た。逆三角の標識が見えてきた。あれは何を意味する標識か、全く解からない。ともかく1時停止、それから走り出した。ロータリを2回ほど周りフョンブイエ方向とかいてある方面へ向けてロータリを出た。あたりは次第に交通量の少ない郊外へそして森の中へと入って行った。

狭い路地を右側に曲がり広場を見つけた。広場を背にして、木の前に車をとめた。そして再びエンジンをかけ外へ出ようとして、ギヤをバックに入れようとしたが、ちっともギヤがはいらない、ローにばかりはいってしまう、ローでは車は、前にしか進まない、どうやったらRのバックギヤに入るのであろう、まったく解からない、これでは罠にかかった鼠、身動きが取れない、

同乗者の父が、【私が車を押そうか】と言ってくれたが、

日本車と違って、重くてびくともしない、また車は人が押して走るものではないので
断る事にした。人がくるのを待った。10分、15分、20分、やっと人影が、

すかさず走りよって、【あなたは車の運転できますか】と片言のフランス語で尋ねた。若い20歳位の青年だった。運転した事が無いので解からないと断られた。それからもう一度人が来るのを待った。

ここは人影のない森の広場だ、うっそうとした森が、灰色に見えてきた。20分過ぎる頃先ほどの青年が父親らしき紳士を連れてきてくれた。片言をつなげて、バックの入れ方が解らないので、教えていただけますか、と言った。紳士は私の運転席に乗ってバックギヤに入れるところを見せてくれた。そして少し動かしてくれた。なんと、グリップのすぐ下のところに丸いリングがついていてそれを押し上げながら、ギヤをRの方に入れると言うことだった。たったこれだけの事で、・ ・ ・
 悪夢から開放された。ほっとした。助けられたと思った。私たちは丁寧にお礼を言いその場をあとにした。それからというものいきなりオートルート高速道路に入ってマルセーユの方に向かった日本と違って道路は片側4車線あるとても皆スピードを出している100キロだと遅くてかえって危険なほどである。130キロで走ることにした。料金所が見えてきた窓で料金を渡したいのだが窓の開け方がわからない仕方なくドアを開けてお金を支払った。これで一応通過次にガソリンスタンドに向かった当時の日本と違ってすべて自分で入れなければならない手がガソリンまみれになった。車をパーキングに止めサービスエリアに入った手を洗うところがありコーヒーを2つ頼んでしばらく過ごした。さあ再出発車に乗り再びオートルートに入ったエクスアンプロバンスという標識が目に入ったのでそこで降りることにした。天気は下り坂右も左も解らないのでアルルに戻ることにした。といってもどうやって戻るのかわからない、すると立て札を持った青年を見かけた。彼を乗せることにした。アルルへ行くことを告げ案内してもらうことにした。車中からはどこから来たかと尋ねたので。答えに詰まっていると、北海道 本州 四国 九州とすべての島の地名を言い出した。彼らにとって日本は島なのだと分かった。それにしてもよく知っていると思った。本州東京と答えておいた。するとその青年があなたの国の総理大臣が倒れたと言っていた。小渕総理のことだようやくアルルに到着して青年と別れてアルルの町中をぐるぐる回ってようやく車に慣れてきた。ともかく初日はこれでお終いホテルの前の無料駐車場に止めホテルバンゴッホに戻った。

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